Prologue

Return


 世界には、ひとつの伝説がある。
 それは、かつて地上に存在したと言われる古代文明の伝説……。

 遥か昔、人々は精霊から、ある力を授かったと言われている。
 それが、『魔法』と言う力。その強大な力は、人々に豊かな暮らしをもたらした。
 そうして人々が築き上げたのが、魔法文明『旧世界』だった。それはまさに、人類の繁栄が頂点を迎えていた時代でもあった。
 かくして、人々は精霊の加護のもと、永く平和な時を過ごしていた。
 ……だが、その繁栄も永久には続かなかった。
 いつの頃からか、精霊たちは人々の前から次第に姿を消していった。そして、精霊たちの加護を失った人々の文明は急速に衰え……やがて時の流れとともに、いつしか失われてしまった……。

 それは、『旧世界』と呼ばれる時代……今はもう失われた文明の伝説だ。


 そして、永い時が流れた……。

 伝説となってしまった古代の文明、それも、本当にあるのかどうか分からない様なモノに興味を示す人は少なかった。彼らにとっては、そんな事よりも日々の暮しで精一杯だった。
 古代遺跡の発掘(あるいは盗掘)なんて、よほどのヒマ人か、酔狂な輩の、一種の道楽のようなものだろう……ごく普通に暮らす人々の認識は、その程度でしかなかった。
 そして、数多くの冒険者(ヒマ人)たちが探し求めた古代文明の財宝、『旧世界の遺産』も、ついに発見されることは無かった。
 やがて、冒険者たちも次第に姿を消していった……。


 しかし、ここにも一人、そんなヒマ人がいた。
 青年の名はハイド。
 冒険者となって数年……大陸じゅうの遺跡を旅して回っている。それもこれも、失われた『旧世界』の財宝を見つけるためだ。
 ……しかし、未だ何の成果も見つけられずにいた。

 そんな中、ハイドは『アーヴィル』と言う街を訪れていた。大陸でも辺境に位置する、小さな街だ。
 アーヴィルには、古くから一つの洞窟がある。
 街の人たちは、モンスターの棲みつくこの洞窟を恐れ、決して近付こうとはしなかった。……が、最近になって、この洞窟の中から古代の遺跡らしきものが見つかったと言うのだ。
 そうしてハイドは、アーヴィルの洞窟へと足を踏み入れる事となった。

 しかし……彼がそこで見たものは、財宝でも何でもなく……。



止まっていた『旧世界』の時間が、
今、ゆっくりと動き始めた……。